乳腺腫瘍は最も多く発見されている腫瘍です。
乳腺にできているため、硬いしこりとして飼い主でも触知し発見できるからです。
避妊手術をしていない中高齢の雌に多くみられます。
<症例>
犬種:フレンチブルドッグ 年齢:9歳8ヶ月 性別:避妊雌
お腹にしこりを発見したと来院されました。
診察時、左第3乳腺にそら豆大の腫瘍を確認しました。
乳腺の腫瘍は、時間の経過とともに周囲の乳腺にどんどん波及して増えていきます。
そうなる前に早めの摘出手術をすることでリスクを減らすことができます。
数日後、乳腺腫瘍摘除手術を行いました。
術前にすべての乳腺を触知し確認すると三ヶ所確認できました。
術後の写真です。
乳腺腫瘍が複数あり左右の乳腺に腫瘍がみられたため、左右両方の乳腺を切除しました。
傷口は広範囲に及びます。
犬の乳腺腫瘍には乳腺癌と呼ばれる悪性腫瘍や比較的良性な線維性の混合腫瘍などがあります。
今回摘出した乳腺腫瘍三ヶ所の内、二ヶ所は混合型の乳腺腺腫でしたが、一ヶ所は乳腺癌でした。
見た目上一番大きい腫瘍は乳腺腺腫で、触診によってわかった小さい乳腺腫瘍が乳腺癌でした。
今回のケースのように大きさだけでは良性、悪性は判断が困難です。
腫瘍が悪性かどうかは病理検査をしないとわかりません。
またかなり進行しないと犬にも目立った変化はなく、食欲もあり元気にしています。もし悪性の腫瘍だとしても早期発見して手術で除去してしまえば大事に至ることを防げます。
しこりがまだ小さいからと言って放置しておかずに早期に受診してください。
猫の乳腺腫瘍は8~9割が悪性で肺に転移しやすい腫瘍です。小さなしこりでも発見したらただちに受診してください。
少し様子を見ようなどという余裕はないと思ってください。
若い頃に避妊手術をすることで乳腺腫瘍が発生するリスクを減らせます。
繁殖の予定がなければ早めに避妊手術を受けることをお勧めします。