腫瘍
腸管の腫瘍

<症例1> 猫 雑種 10歳9ヶ月去勢雄 体重3.44kg

嘔吐・食欲不振で来院。当院での受診は初めてでした。

飼い主によると以前は5㎏あった体重が数ヶ月の間に急激に減少してきたとのことでした。

血液検査により著しい貧血と低蛋白症が認められました。

腫瘍性疾患の可能性もあるためレントゲン検査を行いました。

腹部レントゲンでは腹腔内に腫瘤病変がみられました。

病変臓器を確認するため超音波検査を行いました。

超音波検査では小腸の壁が著しく肥厚していて小腸に腫瘍があることが確認できました。

小腸の腫瘍は進行すると小腸腔が狭窄して腸閉塞を起こしたり、腫瘍壁が壊死して腸壁が破れて腸内の便が腹腔内に漏れ出し腹膜炎を起こすこともあるのでできるだけ早く摘除手術を行う必要があります。

この症例は貧血と低蛋白症が著しく手術時のリスクが大きいため術前に輸血を行いました。

輸血後麻酔をしてCT検査を行いました。

CT造影検査により他臓器への腫瘍の転移やレントゲン検査と超音波検査では確認困難な腫瘍も発見することもできます。

この症例でももう1ヶ所腫瘍があることが確認できました。肺、肝臓、脾臓などへの転移は認められませんでした。

開腹手術により回盲結口(小腸が盲腸と大腸へ移行する箇所)より約5cmの小腸部分に約3.5cmと約2.5cmの腫瘍があり、腸間膜リンパ節にも腫瘍の転移がありました。

2ヶ所の腫瘍の間にも小腫瘤がいくつかあったため腫瘍を含む約15cm小腸を切除し腸管吻合を行いました。腫瘍の転移した腸間膜リンパ節もできる限り切除しましたが、腸管に血液を供給する血管と癒着していたため完全には切除不可能でした。

病理検査の結果「腸管型リンパ腫」と診断されました。

手術後再発、転移を防止するため抗腫瘍剤の投与を行っています。


<症例2> 猫 雑種 13歳去勢雄 体重4.8kg

間欠的な嘔吐と食欲不振で来院。半年前に来院した時は体重7.8kgでしたが今回の来院時は体重4.8kgと著しく減少していました。

この症例もレントゲン検査で腹腔内に腫瘤病変がありました。

超音波検査によりこの腫瘤は小腸の腫瘤であることが確認できました。

腫瘍摘出手術に先立ちCT検査を行い小腸の腫瘍の確認とともに肺、肝臓、脾臓など多臓器に転移がないことを確認しました。

開腹手術を行い腫瘍部分を切除し腸管吻合を行いました。

胃を覆う大網とうい膜に小豆色の濾胞状の小結節が多数みられ同時に切除しました。

切除した腫瘍は腸管全層に厚く増殖していて腸管腔が著しく狭くなり腸閉塞に近い状態でした。

また腸管が広範囲に自壊壊死して腸壁破たん寸前でした。

病理検査の結果この症例も「腸管型悪性リンパ腫」と診断されました。

この症例も大網の転移巣があったことと悪性度の高いリンパ腫であったため抗腫瘍剤の投与を開始しています。


腸管の腫瘍にはこの2症例のようなリンパ腫や腸腺癌があります。

いずれも放置すれば生命にかかわる腸閉塞や腹膜炎を起こします。

動物の腹腔内腫瘍は飼い主が気づく症状がわかりにくく今回のように病院で発見された時はかなり進行している場合が多くあります。

繰り返す嘔吐や急激な体重減少はこのような重大疾患の前兆と言えます。

少しでも異常を感じたらいち早く病院を受診してください。

人でも言われていますが早期発見には健康診断が一番です。

当院ではわんにゃんドックによる健康診断を奨励しています。ぜひご利用ください。

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