血液
犬の血友病

<症例>

犬種:トイプードル  年齢:2歳5ヶ月  性別:雄

去勢手術のため来院しました。

手術前の血液検査の採血後、止血しても血が止まりにくく完全に止血できるまでに時間がかかりました。

このため血液凝固機能に何らかの異常がある可能性もあるため血液凝固機能検査を実施しました。

 

血液凝固機能検査の結果、APTT(トロンボプラスチン時間)が220秒以上と著しい延長がありました。

その他PT(プロトロンビン時間)は19.5秒と延長、フィブリノゲン量は50mg・dl以下と減少していました。

これらの検査結果から判断して先天性に血液凝固因子が欠乏している「血友病」と診断しました。

血友病の場合、軽微な出血でも出血傾向が続き止血しにくく非常にリスクを伴います。

しかし飼い主は雄と雌の同居のため去勢手術を強く希望されていたため去勢手術を実施することにしました。

万が一出血傾向が続いた場合輸血によって血液凝固因子を入れることで出血傾向を改善できます。

出血傾向が続く場合を考え輸血も視野に入れて手術に備えました。

 

その準備として当院の供血犬ラブラドールレトリーバーとの輸血適合試験(血液交差試験)を実施しました。

供血犬から採取した血液が受血犬の血液に適合するかどうか確認するための検査です。

今回は適合と結果が出ました。

 

この結果を踏まえて、後日去勢手術を実施しました。

緊急時に備えて輸血できる体制を整えて万全の状態で行いました。

今回それほど出血もなくスムーズに手術を行うことができたため輸血をすることなく無事に終了しました。

この犬は今後も出血を伴う疾患には充分注意するように伝えました。

このような血液凝固機能因子が欠如している場合も日常生活においては何ら異常はありません。

 

「血友病」は術前検査をして始めてわかったことで術前検査がいかに重要か改めて認識する症例でした。

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